インターネット活動家の奇妙な論理

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今回は、Twitter上で「反捕鯨君」を名乗るインターネット活動家が主張している、いくつかのTweetを眺めながら、改めてその人物像について考察をしていきたい。
この人物は捕鯨問題について長期間、様々な場で言及しているが、一体どんな人物なのだろうか?

「反捕鯨君」ことrさんとは

Twitterで「反捕鯨君」を名乗る人物は、Yahoo!掲示板の「さあ!諸君!捕鯨問題だ!」というスレッドにて十数年前から活動をしている。
初期のログを保管しているサイトにて、独特の語尾「ってこと」などで検索すると、当時の書き込みを読むことができる。
当時から複数アカウントによる書き込みやチェリーピッキング、都合の悪い話題を無視して自己レスを続ける、質問に対して回答せずに自分の質問に対しては回答を執拗に求める、掲示板の進行と関係ないニュース記事だけをコピペ投稿するなど、身勝手で悪質な行動を執拗に繰り返していた。

Wikipediaでは悪質な編集を繰り返すあまり、無期限ブロックになっているアカウントがYahoo!掲示板での文章と癖が酷似しており、同一人物と思われる。
このページにもある通り、

いくら出展をつけたとしても、それが偏ったものであれば、つまりは中立的観点を欠いていては、信頼できる情報源としての価値を貶めるだけではないのでしょうか?

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%8E%E3%83%BC%E3%83%88:%E6%97%A5%E6%9C%AC%E9%AF%A8%E9%A1%9E%E7%A0%94%E7%A9%B6%E6%89%80

他者の発言を借りて主張を行っていますし、その借りた発言も恣意的に選別されたものと見受けられます。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%8E%E3%83%BC%E3%83%88:%E6%97%A5%E6%9C%AC%E9%AF%A8%E9%A1%9E%E7%A0%94%E7%A9%B6%E6%89%80

その観点こそ貴方独自の主張である証拠じゃないんですか?

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%8E%E3%83%BC%E3%83%88:%E6%97%A5%E6%9C%AC%E9%AF%A8%E9%A1%9E%E7%A0%94%E7%A9%B6%E6%89%80

…などなど、この人物の身勝手な編集傾向を批判するコメントは多く、結果賛成多数で無期限ブロックとなった様子。
そのページでこの人物は、

賛成コメントの皆さん、あなたたちは両論併記(中立性)という基本原則を忘れている。

https://ja.wikipedia.org/wiki/Wikipedia:%E6%8A%95%E7%A8%BF%E3%83%96%E3%83%AD%E3%83%83%E3%82%AF%E4%BE%9D%E9%A0%BC/%E3%82%AF%E3%82%B8%E3%83%A9%E5%90%9B_2%E5%9B%9E%E7%9B%AE

という断末魔の叫びにも似たコメントを残しているが、この人物自体のものの見方が「日本の捕鯨許すまじ」という方向で固まっており、その人物の主張する「中立性」や「両論併記」などというものは推して知るべしで、賛成票を投じた人たちは心の中で「お前が言うな」と思ったことだろう。

Twitterでもそうした傾向は変わらず、捕鯨関連のキーワードで検索しては迷惑なリプライを送りつけ続けたからか、Twitter側からペナルティを与えられた可能性があり、リプライを送られた側がそれに気が付かない現象も起きている。

また、過去には「赤いハンカチ」のハンドルネームで捕鯨に関連するブログ記事に偏執的なコメントを残していく活動をしていた(現在は不明)。
捕鯨問題に関する情報を発信しているブログなどを頻繁にウォッチしているようで、katabireというブログでは、こちらこちらこちらにこの人物についての情報が書かれている。
僕のブログはこうした人物の書き込みを避けるために、あえてコメント欄を設置していないが、2ちゃんねるなどに僕のTwitterの投稿とあわせて晒し上げを行うので、以前にこんな記事を書いた。

ざっくりとこの人物について書いてみたが、いかがだっただろうか。
こうした人物の粘着によって、捕鯨についてSNSで発信するのが面倒になり、言及を避ける人もいることだろう。

本当に迷惑な人物である。

個々のTweetを眺めてみる

それでは、rさんのTweetをいくつか適当に選んで、それを眺めながら事実はどうなのかを見ていこう。

韓国の混獲はほとんど「イルカ」だから問題ない?

そもそも、イルカとクジラの名称の区別は厳密なものではなく、生物学的には同じものである。
確認のために手元にあった「クジラは海の資源か神獣か(著:石川創・ NHK出版)」をめくってみたがその中に以下の一文がある。

実は生物学的な分類上に、「イルカ」というはっきりとしたカテゴリーは存在しない。

「クジラは海の資源か神獣か」より引用

イルカとは、ハクジラ亜目の中で小型のものを便宜上そう総称しているだけで、実際はすべて鯨類であり、分類上に違いはないそうだ。
また、韓国の混獲についてはIWCでも問題になっており、それはクジラとイルカの差の問題ではない。
故に「イルカ」だからノーカンは通用しない

活動家の活動は「見学」だから問題ない?

リブへの反論記事にも書いたが、そもそも彼らは太地町の伝統や文化について知る気もないのに、何故見学だと言えるのだろうか?
見学というのは学ぶことであり、対象への理解を深めるために行うことだと思うのだが、活動家たちがしてあることは、支持者たちのヘイトをかき立てることばかりだ。
もし彼らが見学しているのいうのなら、漁業者の外見や表情を収めた画像をネットで拡散する必要もないし、太地町に常駐して「今日は何頭殺された」や「今日は被害が出てません!ブルーコーヴ!」と報告する必要もない。

何故なら、そこから学べることは皆無だからだ。

彼らの活動を「見学」だと主張しているのは、ごく一部(ひょっとしたらrさんだけかも)であり見学とは言えない。

シーシェパードはテロリストではない?

ポール・ワトソンはICPOから赤手配を受けた。

【8月8日 AFP】国際刑事警察機構(ICPO、インターポール、Interpol)は8日、海洋保護団体「シー・シェパード(Sea Shepherd Conservation Society、SSCS)」創設者のポール・ワトソン(Paul Watson)代表(61)がドイツで保釈条件に違反して逃亡したことを受け、ワトソン代表の国際逮捕手配書(赤手配書)を発行した。

https://www.afpbb.com/articles/-/2894139

ICPOによると、ワトソン容疑者がドイツの裁判所に命じられた保釈条件を破って同国から逃亡したことを受け、コスタリカが改めて国際手配を要請。これに応じて7日、「赤手配」と呼ばれる国際手配通知を各国の警察に送った。ただし手配中の人物を拘束または逮捕するかどうかは、加盟190カ国の法律に基づく判断に委ねられる。

https://www.cnn.co.jp/world/35020331.html

すなわち、国際機関が問題人物(もっと言えば犯罪者)であると評価したわけだが、その彼が代表を務める団体が穏当な団体だと言われても…。
現に彼らは複数の破壊活動に携わっており、テロリストの定義と照らし合わせても、合致するのは明らかだろう。

南氷洋での捕鯨は「やめた」のではなく「できなくなった」のか?

IWCを脱退したことで、結果として南極海での捕鯨ができなくなったのは確かだが、その選択をすることは自主的に「南極海の捕鯨をやめた」と言える。
rさんはこの手の言葉遊びがやたら多い。

JARPA IIは「“科学的研究を目的”としたものではない」のか?

この記事でも書いたが、ICJの判決は「計画が計画通りに実施できていないこと」が問題になっている。 つまり、計画自体は科学的研究を目的としていたとこは、判決が認めるところである。

裁判所は,JARPAⅡ調査計画書が,4つの調査目的に対応して調査内容を説明し,科学者がデータの体系的な収集及び分析を行う活動プログラムを提示していると考える。
調査目的は,科学委員会により付属書Y及びPで特定されている調査区分に含まれている(パラグラフ58参照)。
裁判所は、提出された情報に基づき,鯨の致死的サンプリングを含むJARPAⅡの活動は概ね「科学的調査」と性格づけることができると判断する。
したがって,本件の文脈からは,「科学的調査」の概念を一般的に精査する必要はない。
そこで,裁判所によるJARPAⅡについての証拠の審査は,JARPAⅡの遂行により鯨を殺し,捕獲し及び処理することが科学的調査の「目的のため」であり,条約8条1に基づいて与えられる特別許可書により認可することができるかものであるか否かに焦点を当てる。
この目的のために,また適用する審査基準(パラグラフ67参照)に照らして,裁判所は,JARPAⅡの計画及び実施が,記述された調査目的を達成することとの関係で合理的であるか否かを,先述の要素(パラグラフ88参照)を考慮しつつ,検討する。

https://www.mofa.go.jp/mofaj/files/000035016.pdf (下線は引用者による)

以上を総合すると,裁判所は,JARPAⅡは概ね科学的調査として性格付けることができる活動を伴うと考えられるが(上記パラグラフ127参照),証拠は,プログラムの計画及び実施が記述された目的を達成することとの関係で合理的であることを立証していない。裁判所は,JARPAⅡとの関連で鯨を殺し,捕獲し及び処理することのために日本により与えられた特別許可書は,条約第8条1に従った「科学的調査の目的のため」のものではないと結論付ける。

https://www.mofa.go.jp/mofaj/files/000035016.pdf (下線は引用者による)

rさんは全般的に都合のいいところばかりをチェリーピッキングしますが、ではなぜ新たに NEWREP-Aが実施できたのかを考えれば、 JARPA IIの計画自体が否定されたわけではないのは明らかなんですよね。

JAA(日本水族館協会)はインチキ協会か?

JAZA(WAZA)の方針と合わない水族館がJAZAを抜けて新しく立ち上げた業界団体というだけで、正規や非正規という区別はない。
rさんの気持ちでインチキと言われては、JAAもたまらないだろう。

IWCにおける勧奨活動は日本だけが行ったのか?

捕鯨問題を語る上で大切なことなのだが、そもそも、IWCへの新加入国のリクルートは、反捕鯨陣営が始めたことである。

もともとIWCにおける新加盟国のリクルートは、「資源量が多い少ないにかかわらず、すべての鯨の商業捕鯨を禁止する」商業捕鯨モラトリアムの採択のために反捕鯨NGOが1970年代終わりに開始したものである。 日本など捕鯨国側は、「鯨資源の保存と適度な利用」という条約本来の目的の実現を目指してきたが、固定化した投票パターンを打ち破るには捕鯨側の主張に同調してくれる新規加盟国をリクルートせざるを得ないとの判断から対抗措置に打って出た。 その結果、非ヨーロッパ圏を中心に加盟国が増えて2006年のIWC総会で「商業捕鯨モラトリアムはもはや必要ない」というセントキッツ・ネービス宣言が採択されるにまで至ったことに反捕鯨国側は危機感を強め、2007年2月にはイギリス政府がEUやアフリカの非加盟国を反捕鯨陣営に新規加盟させる意思を表明している。

http://luna.pos.to/whale/jpn_zat_iwc_member.html

反捕鯨陣営に参加した国々は、後にさまざまな脅迫めいた行為を受けている。

反捕鯨側の政治圧力の一例だが、1994年に南氷洋のサンクチュアリー案に反対しようとした南太平洋のソロモンは、反捕鯨国から輸出品であるバナナの禁輸の可能性でもって脅された。 同様にカリブ海の4ヵ国には、アメリカの反捕鯨団体から多量の抗議文書がFAXで送られ、観光地のホテルに大量に予約してキャンセル料が発生する直前の日にキャンセルされるといういやがらせに遇っている。

http://luna.pos.to/whale/jpn_zat_iwc_member.html

また、環境団体が勝手に代表となるような行為もあった。

そして、それらの国の国籍を持たないグリーンピースの活動家やその仲間が代表団のコミッショナーや代表団員としてIWCの会議に参加していた。 このような状況の中で1982年、商業捕鯨のモラトリアムは棄権5票を除いた有効票32のうち賛成25という4分の3プラス1で可決されたわけだが、この年の代表団リストを見てもアンティグアのコミッショナーのR. Baron、セントビンセントのコミッショナーのC.M. Davey、セントルシアのコミッショナー代理のF. Palacio、セイシェルのコミッショナー代理のL. Watsonなどはそれぞれの国の国籍を持たない反捕鯨活動家であった。

http://luna.pos.to/whale/jpn_zat_iwc_member.html

こうした行為をなかったことにして、日本の勧奨活動のみを批判するのはナンセンスだろう。

伝統なら「ふんどし一丁」で「手漕ぎ」でなければダメ?

リブへの反論記事にも書いたが、太地町の歴史を紐解けば、この主張がいかに的外れかがわかることだろう。
彼らの伝統は「鯨を捕ること」であり、そのためにさまざまな技術を取り入れて、また生み出してきた。
古式捕鯨でさえ一つの形ではなく、対象の捕獲に適した形を選択して実施されたものであり、更に先進的な技術が存在したなら、鯨方は躊躇なくそれを取り入れただろう。
故に、ふんどしや手漕ぎと捕鯨の伝統は紐付くことではない。
もっとも、rさんは「ふんどし一丁」が好きみたいなので、それは趣味の問題なのかもしれない…。

太地町での職質は常識?

まず、太地町では以前、職務質問を受けやすい場所(畠尻湾付近)があったのは事実だが、それが町内全体となると事実ではない。
更に、交番の場所が畠尻湾の前から移動したため、職務質問を受ける回数はかなり減っているだろう。
rさんは「イメージで語るな」と言ったりするが、イメージで語っているのは自分の方だったわけだ。

「鯨の完全利用」はプロパガンダ?

この手の主張は反捕鯨主義者に多いが、日本ほど鯨という資源を無駄なく使おうとした国家は他にないだろう。
多くの場合と同じように、沿岸捕鯨によって食料としての活用から始まった日本の捕鯨は、他の捕鯨国が沿岸の資源を枯渇させて遠洋に漁場を切り替えてからも沿岸捕鯨を続けていかざるを得なかった結果、現在まで多様な鯨食文化が残る程度には食料としての活用できている。
ところが、かつては骨を肥料や採油原料として活用しており、ほぼ全てを資源としていたのは事実である。
故に、今も昔も可能な限り無駄なく鯨を活用していたのは事実と言える。

南氷洋においても戦前こそは法的な規制で十分に活用できなかったものの、戦後はGHQの監視の下で他の捕鯨国以上の生産性を求められ、しかも鯨油と鯨肉の両方を確保するという無理難題を達成することができた。
流石に骨や血液までは活用できていないが、畜産動物の歩留まりを考えれば、それでも同程度には活用できているだろう。
「プロパガンダである」というプロパガンダを流布しているのはrさんの方だったわけだ。

空腹は苦痛だから熊が人を襲っても仕方ない?

最近になって、こうした動物の問題にも口を出すようになったrさんだが、相変わらずズレた発言をしている。
食害や獣害を「仕方ない」で済ませられるのは、その地域の生業者や生活者の存在を無視しているからであり、自分自身がその場で暮らしていて農業を営んでいたら、同じことはまず言えないだろう。

アニマルライツの人は一切動物を食べない?

アニマルライツ信奉者は、必ずしもヴィーガンではないし、動物への搾取をしないかと言えばそうでもない。
何故なら主義主張と体質や生活は別だからである。
この辺りの理解がない人が多いのも事実だが、厳密さを求めるあまり、体調を崩してしまう人も存在する。
どんなに種差別を憎んでいても、体質を完全に変えることは難しいし、ペットにヴィーガンフードが合わなければ、通常のペットフードを選ばざるを得ないだろう。
個人的には、ペットを飼うことは畜産や動物園などと同じように生命の搾取に当たるのではないかと思うのだが、アニマルライツ信奉者にはペットを溺愛している人物も多い。

「ぼくらはそれでも肉を食う(ハロルド・ハーツォグ著。柏書房)」ではワシントンの大規模なデモに参加している運動家たちを対象に調査した結果、97% は食事を変えたと答えたが、その大部分はそれでも肉を口にしているということが書かれている。
同書には、菜食主義に目覚めたものの、健康上の理由で肉を口にする生活に戻った人がかなり多いという話も書かれており、一番端的な表現として以下の文章がある。

「なにがあろうと、貧血になるくらいなら死んだ牛を食べるほうがマシ」。

「ぼくらはそれでも肉を食う」より引用

逆に、厳格な菜食主義を貫ける人はそれほど多くなく、故にそれを一般化することも難しいと言えるだろう。

Tweetを眺めていてわかること

こうしたネット活動家は、おそらく様々な分野にいることだろう。
そして、正業者に対して様々なヘイトを撒き散らし、ハラスメントを喚起し続けているのが現状だ。
この人物にしても、太地町の漁師へ向けての発言は酷いものがあり、そういった人たちとわずかにでも繋がりのある人なら、憤りを感じると思う。

ただ、こういった人物が現実に及ぼす影響はほぼ皆無で、さながら「コップの中の嵐」でしかない。
Twitterなどで見かけたりリプライで絡まれた場合は、無視するか、おちょくる程度の反応で十分に思える。
何せ、相手には議論するポーズはするものの、議論する気は毛頭ないので、資料を元に反論を試みたところで無駄になってしまう事が多いからだ。
そして、何度論破されても同じ発言を繰り返すだけなので、不毛なやり取りが積み重なるだけだったりする。

こうした人物に対して効果的なのは、彼女(投稿の傾向からこの人物が女性であるという意見が多い。僕もそう考えている)の攻撃に対して「クジラって美味しいよね」「もっとクジラ食べたいね」とでも返信して、はなから相手にしないことだと思う。
もしあなたが、日本の捕鯨を応援していて、クジラを食べたいと思うなら、このような人物相手に消耗することなく、美味しいクジラを存分に味わってほしいと思う。

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