和田浦へ

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • LINEで送る

一年ほど更新が空いてしまい、申し訳ありません。

昨年更新以降、二度ほど太地にも行っているのですが、新型コロナ関連の事情やその他の事情で、大したこともできず、またいくらか積読中の捕鯨関係の書籍を消費して、新しい動画の構想も考えていたのですが、こちらも完成はまだまだ掛かりそうで(というか、構想段階で止まってしまっています)…。

ただ、そんな日常の中で、ふと思い立ってある場所に行ってきました。

それは、千葉県南房総市和田町という、房総半島の南端にあるばしょです。
ツチクジラを捕獲している数少ない場所である、和田浦です。

今の状況を鑑みて、本来なら物見遊山で見るものではないのかもしれませんが、今を逃したら見ることはできないかもしれないと考えると、どうしても見たくなる。そんな事情もあり、25日の早朝に解体があるという告知があったのを見て、足を運ぶことにした次第です。

現地に到着して、開始時間近くまで近所のコンビニで待っていましたが、あまりにも雨が強く「本当に解体するのかな?中止にならないかな?」と不安になりましたが、朝方には小雨になり、解体を見物することができました。
今年は新型コロナウイルスの影響で、少し離れた駐車場から見物できるようになっており、僕はついた頃には10人程度の見物人がいましたが、最終的には30人程度の人はいたと思います。中には何日か通ってきている人もいて、そうした人たちの存在を知ると、ふと、昔自分が書いたブログの記事が杞憂だったのかなと思いました。

以前に僕はこの施設について、もっと警戒したほうがいいのではないかという意見を書きました。その意見は今でも変わりません。
しかし今回、実際に足を運んでみて、終わりの方まで見物をさせていただいて、「こういうものも、あるべきなのかもしれない」と、思うようになりました。

見物をしていた親子の会話

捕獲されたツチクジラは、解体の直前まで港の端の岸壁に係留されていて、解体が始まる少し前に解体場に移動されてきます。
作業員によって、写真のようなおおよその測定が行われ、その後解体に入ります。
この時、その大きさに思わず「でっかいなー」と、驚きの声を漏らす人が若干いました。僕もその一人でしたが、頭で知っていても、実際にその大きさを目の当たりにすると、声に出てしまうものなのでしょう。
大包丁(薙刀のような大きな刃物)を使って、器用に皮の部分の脂身を切り、肉の部分から剥がすためにウインチを使ってメリメリと剥がしていくところは、話に聞いているのと実際に見るのでは違ってきます。

一時間ほどで皮の脂の部分は剥がされ、赤身の部分も骨から外され、頭の部分もはずれた状態になりました。その解体の様子を見ていた親子(会話を聞いた感じでは、親子だと思う)がいたのですが、

「大好きな鯨さんのお肉は、こうやってできるんだね。鯨さんのお肉、大切に食べないといけないね」

というようなことを母親が話していました。
この会話自体は、おそらくは色んな場所でかわされていたことなのだと思います。しかし、その鯨という巨大な生き物としての姿が加工されて、徐々に鯨肉という食品の素材に変わっていく過程を見つめることで、言葉で聞くだけよりもイメージが記憶に残るでしょう。
特に、余計な印象を持っていない人たちにこそ、こういった様子は見るべきなのではないかと感じました。

鯨と人々の文化を知る

実は今回来ようと思ったきっかけの一つは、「鯨と生きる」という写真集を太地のくじらの博物館で購入したことがあります。過去に「クジラ解体」という写真集を見て、その迫力に驚かされたのですが、こちらの写真集は文化的な側面で和田浦の人たちと鯨の関わりみたいなものを知ることができる一冊でした。
この写真集を見て、ぜひ一度見に行きたいと考えていました。

「鯨の解体を見ることが文化に触れたことになるのか?」という疑問を持たれる方もいるかも知れませんが、一つの場所で毎年行われ、その土地の人々が集い、その光景を見に他所からも多くの人がやってくるというのは、地域の文化としての価値は大きいと思います。

こうしたものをいくら知ったとしても、僕は所詮は余所者であり、その場所に住んでいる人達からすれば「物見遊山で来る物好き」以外のナニモノでもないのでしょう。しかし、太地で見聞きした事柄についてもそうなのですが、その文化のあり方は、できれば多くの人に知ってほしいと感じました。
特に最近、新型コロナウイルス禍で都市部の問題が大きく取り沙汰されている用に思えるのですが、今だからこそ地方のあり方や魅力、地方の価値を見直すべきに来ているのではないかと、その価値の中に捕鯨に関する文化もあるべきだと思います。

今回は、あまりにも急な行動だったこともあって、宿なども確保せずに見物にでかけてしまったため、史跡などを巡ったり、鯨料理を食べることもできませんでした。次に和田浦に行くときは、ちゃんと予定を入れて数日は滞在したいものです。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • LINEで送る