トロフィーハンティングと害獣駆除

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今まで「某猟友会」と濁して書いてきたが、今回から僕個人の責任において、その団体の名前を明らかにすることにした。
それは岩手県花巻市で活動する「特定非営利活動法人 花巻猟友会」(以下「花巻猟友会」とする)という名称で、公的に登録されているNPO団体だ。
以前には「目指せ!狩りガール」というサイトの中でも取り上げられており、ほかにも岩手県からも認定鳥獣捕獲等事業者として登録もされている。
ちょっと検索すれば定款のPDFまで公開されており、以前に動物愛護系の団体で、とてもずさんなのを見たことがあり、比較するのも申し訳ないですが、それからすると個人的にはきちんと活動をしているNPO法人ではないかと思えた。

さて、この花巻猟友会のFacebookページが、アニマルライツ系のFacebookユーザーによって誹謗中傷コメントが大量に書き込まれており、そのひどいコメントに対して反論するユーザー(僕を含む)も含めてコメント欄が荒れている状況だ(僕も正直申し訳ないと思ってはいるのだけれど、「ここまで言われたら猟友会の方も辛いだろう」と勝手に思い込んでコメントを書き込んでしまうのは、反省しなければならないと思う)。
捕殺された鳥獣等が写っている画像をヘイトを集める目的でシェアし、生業者を罵倒するコメントを書きなぐる様は、もはや様々な場所で見かける光景ではありますが、ページを運営しているのはSNSに精通しているわけでもヘイトスピーチに慣れている訳でもないので、かなり面食らったと思います。

ただ、個人的には、猟友会で行われている捕殺よりももっと理不尽で、残酷な狩猟が世の中にはあり、そう言ったことを問題視するアニマルライツ活動家が非常に少ないように思えます。
それは、トロフィーハンティングといい、娯楽のための狩りなのです。

「サファリ」というドキュメンタリーについて

そのトロフィーハンティングの実情を、淡々と記録したドキュメンタリーが2016年に制作され、日本では単館系の映画館で上映された「サファリ(ウルリヒ・ザイドル監督)」だ。
この作品は、極々一般的な人たちが、観光目的で行うハンティングに同行し、その様子を記録した部分や、その当事者たちが自分たちが行ってるハンティングについてどう考えているかをヒアリングする様子など、興味深いシーンが多々あり、白人の旅行者たちが射殺した野生動物を、現地民たちが解体所まで運搬し、毛皮を剥ぎ、解体するという作業が淡々と行われているシーンは、見る人によっては卒倒してしまうだろう。
映画のパンフレットによると、アフリカではサハラ砂漠以南の24カ国で野生動物の狩猟は許可されており、年間18,500人のハンターがレジャーとしてハンティングを行い、許可している国々も高い収益を上げることができる貴重な観光資源として、積極的にハンティングを許可しているそうだ、

トロフィーハンティングという言葉は、日本ではあまり認知度はないが、要は野生動物の毛皮や頭部などのために行うハンティングで、主に西洋で行われていたものだ。
映画の中では白人の太った老夫婦がカタログを見ながら、獲物についた値段を話し合うシーンがあり、予算に合わせて午前に一頭、午後に一頭と、1日に二頭の狩りをすることができるという仕組みになっているらしい。
トロフィーハンティングによって野生動物にどの程度の捕獲圧がかかっているかが気になるところだが、アニマルライツ的には「娯楽のために行われる捕殺」に注目することだろう。
旅行者の集団一つに対して、1日に最高で二頭の動物が殺される事実を、彼らは看過できるのだろうか?

ハンターたちの主張

パンフレットには、トロフィーハンティングに参加した人々の主張が綴られている。興味深いので、一部を引用してみよう。

ドイツ人の家族ハンター

(娘)ハンティングは無差別に動物を撃つということではないわ。

(息子)ハンティングは動物のための救済に近い行為だ。

(娘)高齢で衰弱した動物を殺すのはまさにそうよ。

(息子)病気の動物もそうだ

(娘)傷を負った動物とかもね!

(息子)むしろ、我々は動物の生態系の維持を助けているんだ。生きるべき動物は生き延びまた新たな命を生んでいるのだ。

映画「サファリ」パンフレット 「白人の主張」

ドイツ人ハンター

ハンティングが管理された条件で行われている限り、それは合法であり実行可能です。特にアフリカのような途上国では、人々はそこからお金を得ることができる。私たちは、通常の観光客が2ヶ月で使う費用をたった1週間で使っている。ハンティングはすべての者に利益をもたらせている。

映画「サファリ」パンフレット 「白人の主張」

ハンティングロッジのオーナー夫妻

(夫)根本的な問題は人類が増えすぎたせいだ。我々人類は、ピラミッドの頂点に立つのに全く不要なのだ。人類がいなくなればきっと世界は今より良くなるはずだ。

(妻)……(右手に持つタバコの煙がゆらめく)

映画「サファリ」パンフレット 「白人の主張」

最初の引用部分はとても身勝手な解釈に、苛立ちを覚える人もいるのではないだろうか?
彼らのハンティングと資源管理には全く相関性はないし、ハンティングの最中に彼らが「あのヌーは健康体で若いから狩るのをやめよう」なんて絶対に思わないだろう。
次の引用部分についても、思うところがある人は多いだろう。
ハンティングのために資源管理を行なっているという話を、僕は聞いたことがないし、公的な団体でそう言った調査なりがあるなら、ドイツやオーストリアでもネガティブな印象は薄れるのではないだろうか(この二カ国ではネガティブなイメージが強いらしい)
最後の引用に関して言えば、ディープエコロジーを感じさせるし、アニマルライツ系の活動家が「最も有害なのは人間だ」などということを主張するが、立場を考えてみると「どの口がいっているのか?」とも思わなくもない。

この引用はあくまでパンフレットに掲載されている部分の一部を引用したにすぎないが、作中では登場人物の常識を疑ってしまうようなシーンが数多くある。
それは是非、自分の目で見ていただきたい(現在は、有料ですがアマゾンプライムビデオで視聴可能です。)

害獣駆除はトロフィーハンティングではない

さて、話を害獣駆除の方に戻すと、これは農耕を生業とする人たちの生活を野生動物から守るための最後の手段であり、そこに至るまでは様々な努力がある。
よく花巻猟友会のFacebookページでも上から目線の物知り顔で「殺さない環境を作れ」だの「共存する方法を考えろ」だのと書き込む人がいるが、猟友会が動くというのは、それが実を結ばなかったからだろう。
食害に合えば、収入も減少し、マイナス分を補填するために金策に走らなければならない農家が増えると、廃業する人も増えてくるだろう。それが高齢化が著しい花巻市ならなおのこと可能性が高くなるに違いない。
アニマルライツ系の書き込みをする人たちの多くは、花巻市の実情を調べようとせず、現地の農家の生活を想像することすらせずに、猟友会の活動に対してヘイトをぶつける。
繰り返しになるかもしれないが、これは必要な狩猟であり、画像を掲載するのは自分たちの活動の報告のためである。最近ではわざわざ画像加工して掲載しているが、それでもヘイトコメントは止まらない。中には恫喝めいたものまであり、管理者の人が気の毒でならない。
このような地方の猟友会で行われている生業を問題視する前に、一度「サファリ」を見て欲しいと思う。

そして、動物愛護とはなんだろうかと、一度考えて欲しいものだ。