太地町で、とても残念な事件が起きた。くじら浜公園の刃刺の像が、活動家によって傷つけられた。太地町への理解のない活動家に対して、多くの人が怒っているだろう。
今回被害にあった刃刺の像は、太地町のくじら浜公園の中にあり、捕鯨船や噴水などがある一角に展示されていたもので、高さはおよそ四メートルほどで、長い銛を構えている姿が、勇壮な古式捕鯨の雰囲気を伝えるに十分なものでした。
古式捕鯨において刃刺(「はざし」と読む。羽刺と書くこともある)とは、捕鯨を行う際に重要な役割を果たす立場にあり、その浦においては英雄的な存在で、多くの人の憧れ的でした。
彼らが乗り込み水の上を駆ける勢子船も、彼らに活躍に見合うような美しい塗装が施され、捕鯨地において鯨を捕るということがどれだけ大切な仕事だったかが、ひと目で分かるようなものでした。
古式捕鯨が衰退し、ノルウェー式の捕鯨砲が用いられるようになると、日本人の砲手は刃刺から選ばれました。
砲手もまた、現在の捕鯨において重要な役割を担い、捕鯨を行う際は砲手は大きな権限を持っていました。太地町では、南極に捕鯨に行った方を「南極さん」と親しみを込めて呼び、同様に砲手のことを「鉄砲さん」といいました。
鉄砲さんは町の人達の憧れで、NHKで放映された「クジラと生きる」という番組でも、そのエピソードは登場します。
Whales, the blessing of sea – living with the… 投稿者 hetarefukuda
上の動画の、25:00辺りからご覧ください。
亡くなられても未だに「太地の憧れの的だった」と語られるのが、捕鯨船の砲手なのです。
古式捕鯨の刃刺ともなれば、さらに語り継がれたことでしょう。
これは僕の想像ですが、その刃刺の像が第11京丸の前にあるということは、これまでの太地町の営みを表す重要な意味があったのではないかと思うのです。
更にいうと、この刃刺のモデルが誰なのかによっても、その意味の重さは違ってくるでしょう。
このモデルが一体誰なのかは定かではありませんが、尾張師崎から来たと言われる伝次だとしたら、これは捕鯨の町としての太地町の成り立ちを表しているのではないかとも思えるのです。
伝次の存在は、書籍によってまちまちですが、多くの資料では泉州堺の浪人である伊右衛門とともに太地の捕鯨の基礎を築いた人物で、太地町のホームページでも名前が確認できる人物なのです。
上記のことを踏まえて、今回の事件のことを眺めていると、コーヴ・ガーディアンズ(もしくはそれに類する活動家達)が、どれだけ太地町、もっと言えば日本の文化や風習、伝統などに無理解で、学習能力が全くないのではないかと考えられるでしょう。
彼らが言うところの法令の尊守は言葉だけで、全く意味のないものです。
そして、法的な強制力の及ばないところで、住民にハラスメントを行い、運悪くそれが露見すると、トカゲの尻尾切りとも言えるメンバーのリストラを行うのです。
これが健全な動物愛護活動かどうか問われると、多くの人が首を傾げることでしょう。
人と人が出会い、関係を深めていく仮定では、お互いのバックグラウンドとなる情報をある程度把握し、理解していく事が必要になってるでしょう。
隣人ならともかく、人種も国籍も違うような人たちが、もう一方の人たちに何かを求める際には、最初から大きな壁があるはずですから、それを少しずつ無くしていくためにも、お互いの伝統や文化に理解を示す必要があるのではないかと思います。
そういった事が理解できないような、ある意味侵略的な活動は必要ありませんし、それに対して譲歩する必要など全くありません。
和歌山県警および海上保安庁の皆様には「地域の歴史や文化、伝統を軽視する活動家に対しては、強硬な態度で望んで下さい」と、お願いしたいです。
事件に関するのテレビ番組の画像
以下の画像は有田さん(@arida71)にご提供いただきました。ありがとうございます。
報じられたニュースなど
「町民の心踏みにじる」・・・太地・捕鯨像損壊
太地町のくじら浜公園にある捕鯨の歴史を伝えるモニュメントを壊したとして、反捕鯨団体「シー・シェパード」の関係者のドイツ人が器物損壊容疑で逮捕された事件で、三軒一高町長は9日、「先人の苦労をしのぶ町民の思いを踏みにじる行為」と怒りをあらわにした。
同町では1878年(明治11年)、親子のセミクジラを追った船団が遭難、100人以上が亡くなる大惨事が起きた。「脊美(せみ)の子持ちは夢にも見るな」とも言われ、捕鯨の歴史に残る悲劇として語り継がれてきた。
モニュメントは、当時の砲手「刃刺し」をイメージしたブロンズ像。日展会員の彫刻家・野畠耕之介さんが制作し、1998年にくじら浜公園に設置された。背景の捕鯨船「第1京丸」とともに、観光スポットになっている。
壊されたのは刃差しが掲げるもり(長さ4・3メートル)で、中央部分から折れ曲がっている。逮捕されたドイツ人容疑者がモニュメントの台座に上って、もりにぶら下がったとみられ、町はできるだけ早く復元したいとしている。
三軒町長は「大惨事に遭いながら、捕鯨に生きてきた先人への思いがこもったモニュメント。我々の象徴が壊されたことに憤りを感じる」と話している。
(2012年10月10日 読売新聞)
漁師像を損壊の疑い、反捕鯨団体員を逮捕 和歌山・太地町
和歌山県太地町の公園にあるモニュメントを壊したとして、和歌山県警新宮署は8日、器物損壊の疑いで、反捕鯨団体「シー・シェパード」メンバーで、ドイツ国籍の自称庭師、ニルス・グレスキーズ容疑者(25)を逮捕した。
逮捕容疑は8日午後4時半すぎ、太地町の「くじら浜公園」にある、漁師が約4メートルのもりを持っている青銅製のモニュメントのもりの部分にぶらさがるなどして先端を折り曲げた疑い。
同容疑者は「壊す気はなかった」と供述している。5日から日本に滞在していたという。〔共同〕
シー・シェパード関係者を逮捕=捕鯨の銅像壊す-和歌山県警
和歌山県太地町で公園の銅像を壊したとして、県警新宮署は8日、器物損壊容疑で、反捕鯨団体「シー・シェパード」の関係者で、自称庭師のニルス・グレスキーズ容疑者(25)=ドイツ国籍=を逮捕した。同署によると、「壊すつもりはなかった」と供述しているという。
逮捕容疑は8日午後4時半~45分ごろ、太地町内の公園にある銅像にぶら下がり、一部を壊した疑い。
同署によると、銅像は青銅製で高さ約3メートル。捕鯨のために船の上からもりを打つ漁師「刃刺(はさし)」の銅像で、もりが曲がっていたという。(2012/10/09-01:39)
(上記ニュースは時事ドットコム)
シー・シェパード:捕鯨のモニュメント壊した容疑で男逮捕
毎日新聞 2012年10月09日 01時02分(最終更新 10月09日 02時32分)
和歌山県警新宮署は8日、反捕鯨団体「シー・シェパード」のメンバーでドイツ国籍の自称庭師、ニルス・グレスキーズ容疑者(25)を捕鯨のモニュメントを壊したとして器物損壊容疑で逮捕した。同署によると、「壊すつもりはなかった」などと容疑の一部を否認している。
逮捕容疑は同日午後4時半〜45分ごろまでの間、同県太地町太地の町営くじら浜公園に設置された銛(もり)打ちをかたどった青銅製のモニュメントにぶらさがり、長さ約4メートルの銛を中央付近から折り曲げたとされる。
同署によると、グレスキーズ容疑者は今月5日に入国。同町に来たのは初めてという。モニュメントは98年に設置された。【藤原弘】