「今後はICJで訴訟を起こされても受けて立たない」という話の間違いについて

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もう賞味期限切れの話ではありますが、このことも書いておかなければいけないと思いつつ、体調が戻らず書けずにいました。

あえて誤解したい人達が多いようです。

「今後はICJで訴訟を起こされても受けて立たない」は本当なのか?
一部の人達が、「日本はICJで敗訴したことで、調査捕鯨は禁止されなければならないはずなのに、それを継続しているのはおかしい!」という主張や、「ICJで決定したことに従わず、今度はICJで訴訟を受けないと言い出したぞ!これはおかしいだろ!!」という主張をしている件ですが、勘違いならまだしも、おそらく故意に誤った解釈をしているであろう人たちがいるようです。
以前もこのブログに書きましたが、ICJでの判決は「JARPA II」というプログラムに関しての評価であり、調査捕鯨を禁止するものではないということさえ、ご存じない方も多いようですが、今回の話に関しても、中途半端な理解が誤解を読んでいるようです。
今回の話は、単純にICJではなく、単に別の裁判所で争いますよという告知に過ぎず、日本以外の国もこういった方法を選択している国はあるようです。つまり、特別おかしなことをしているわけではないということです。
詳しくは、こちらをお読みいただければ、ざっくりとわかると思います。

最後の部分だけを引用しますと、

つまるところ、こういう海洋資源に関してはより専門的な知見からも検討が可能である紛争解決手続が適当であると考えたというお話です。もちろん、この紛争解決手続も上記にあるように「国際海洋法条約」の紛争解決手続であって、国際法に沿ったもの(というか国際法そのもの)ですので、国際法を軽視している!という話ではありません。
また、国連憲章第33条には次のようにあります。
>第33条
>1. いかなる紛争でもその継続が国際の平和及び安全の維持を危うくする虞のあるものについては、その当事者は、まず第一に、交渉、審査、仲介、調停、仲裁裁判、司法的解決、地域的機関又は地域的取極の利用その他当事者が選ぶ平和的手段による解決を求めなければならない。

ここで重要なのは、“当事者が選ぶ”というところです。基本的に紛争当事者はその平和的解決方法を平和的な手段の範囲において自由に選ぶことができる、ということです。

したがって、日本が海洋資源の事柄に関して、ICJの管轄権を除外して国際海洋法条約における紛争解決手続を用いることを決めた今回のお話は国連憲章ならびに慣習国際法にも認められた国際法上正当な権利の行使であって、国際法の軽視ではない、ということです。

……ということです。
 
で、このことについて少々愚痴を書きます。
まず一つは、新しい調査捕鯨の計画が、どうも後ろ向きに見えてしまうということです。
現場の方々には大変申し訳無いのですが、ミンク以外の鯨種についてもキチンと捕獲計画を建てるべきではなかったのだろうかと、僕は思います。
また、今後は商業捕鯨の再開にを視野に入れて欲しいと思うのです。
 
次に、今回の話を故意に誤解したような話を繰り返す研究者がいるということです。
こういった件について知識のない僕でさえ、一読でおおよそ理解できたことなのに、あえて誤読して、なおかつ誤読している内容のTweetを積極的にリツイートして回っているだけにとどまらず、自著の宣伝までしているところが非常に痛々しいなと、かなりゲンナリしてしまいました。
 
その方は、IWCのTwitter実況でとてもお世話になっている方なので、本当に残念に思いました。

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