ドルフィンウォッチングは、反イルカ漁の旗手になりえるか?

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Facebook経由で知ったことですが、以前に富戸でドルフィンウォッチング事業を営んでいて、廃業を宣言したはずの石井氏が、再び支援を乞う投稿がアップロードされていました。(魚拓)スクリーンショット。

この記事を投稿した背景はなにか?

太地町のイルカ追い込み漁の漁期が始まる9/1が近づいてきたこともあり、TwitterでもFacebookでも、反捕鯨団体及び動物愛護団体の界隈では、動きが慌ただしくなってきました。
先日は「水槽を空にせよ!」というアクションが三箇所(鴨川シーワールド・海遊館・須磨海浜水族園)で行われ、8/31には東京で反対デモが予定されています。
そして、今回のこの記事は、そんな漁期が迫ってきた8/27に投稿されたようです。
内容については、魚拓やスクリーンショットを各自でお読みいただくとして、思ったことを少し書きたいと思います。

この記事を読んで感じたのは、「既に事業の体を成していない」ということです。
きちんと事業として成果を出せていれば、Facebookにこんなことを書かなくても、話題が話題を呼ぶでしょう。
以前の記事でも、あるサイトから引用させていただいたように、「大手ツアー会社からの引き合いもくるなど、明るい材料は多い。また、漁協の理事が“個人的に”ウォッチング船を共に出すなど、新しい動きも出てきている」ということも現実になったかもしれない。
しかし、現実はその逆で、結局は事業としては失敗していて、支持者を煽らなければ支援も得られないような、そんな有り様になってしまっているのです。

また、おそらく支援者の多くは、追い込み漁が過去に富戸でも行われており、休漁こそしているものの、現在も漁獲枠は有しており、技術の継承を目的として、漁期には常に漁の準備をしているということを、ご存じないのでしょう。
以前には、こんなまとめもありましたが、そのことすら知らずに、中にはこんなツイートを、自信満々でしている人もいます(この人が支援者かどうかは存じませんが)。

@yachiyo882002 @lovepeaceyoutoo 太地町に比べて認知度が低いですね。今後は太地町と伊東と両方一緒に抗議ツイートして参ります!イルカウォッチングでは儲からない、大儲けするには水族館に売り飛ばすのが一番ですからね‥ 金のためなら何でもする連中です。
— 動物虐待を許さない市民の会 (@hana_ko45) August 26, 2013

富戸のイルカ追い込み漁は、太地にも伝わった部分があり、ある意味追い込み漁に関しては元祖とも言える場所ですから、「知名度が低い」というのは完全に思い違いなのですが、ザ・コーヴしかご存じない人たちばかりが集まってきている現状では、こういった知識を得ようとする人が全くいないようです。

話を戻しますが、そんな中、Yahoo!のニュースにもいとう漁協のイルカ猟に関するニュースが掲載された事もあって、石井氏の所に様々な連絡が入ったために、釈明記事を書かなければならなくなったのが、この記事が書かれた理由なのではないかと思います。
しかし、そんな記事でも、石井氏は一生懸命に自分に注目が集まるように、計算をしているのではないかとも感じます。

リック・オバリーの名前を持ち出す意味

個人的に気になった部分を引用したい。

私はリック・オバリーに言ったことを今でも思い出す。
もし、あなた方が富戸でイルカ捕獲を反対して、富戸が捕獲することを断念したら、その捕獲枠は、ほかの地域に与えられて富戸で捕獲できなかったイルカを他の地域で捕獲される可能性がある。
要するに、捕獲は事実上できないのに、まだ捕獲を言い続けているだけだと俺は思うし、ほかの漁師もそのように思っている人が多いのも事実だ。
だから、捕獲したいということを言いたいのなら言わせておけばいい。
そうすれば、富戸に与えられた捕獲許可数のイルカたちは安全だともいえる。
そのようなことをリックに言ったら、納得しているようだったと俺は覚えている。

石井氏は、自分が様々なメディアに取り上げられて、海外からの支援者も大勢いるはずなのに、さらにリック・オバリーの名前をここで持ちだしています。
ドルフィンウォッチング事業がうまく軌道に乗っていれば、こんなことを書かなくても良かったのですから、かなり動揺しているのでしょう。
これは想像なのですが、批判者の言葉は重く鋭い刃のように、石井氏の心に刺さったのではないでしょうか?
事情をよく知らない人がほとんどでしょうから、「まさか、貴方の地元で、未だに追い込み漁が行われているなんて!!」と、ヒステリックに喚かれたのかもしれません。
そこで、自分よりも有名人であるオバリーの名前を持ち出すことで、それ以上の批判を回避しているのではないだろうかと、そんな事を思いました。

「富戸の捕獲声明にいちいち気にかけることはしなくてもいい」

ウオッチングこそが静かな捕獲反対運動であると俺は信じている。
毎年、イルカ捕獲の予算金額は0円だ。
そして実行金額も0円。
『言いたい奴には言わせておけ』
事実上不可能なのだから。
富戸の捕獲声明にいちいち気にかけることはしなくてもいい。

富戸のイルカ追い込み漁のニュースは、石井氏にとって、とても都合が悪かったのでしょう。
だから「そんなことはどうでもいいのだ」と言わざるをえないわけです。
しかし、現実には技術継承のためにも、いとう漁協では、追い込みの機会が欲しいわけです。
追い込まれた鯨類は、おそらくは資源調査のためにタグを付けて再放流されたり、水族館などへ生体販売されたりするため、時々「太地の残酷なイルカ猟!」とキャプションを付けられてアップロードされる富戸のイルカ漁の画像のように、海面が真っ赤に染まるようなことはないでしょう。
それでも、石井氏にとっては都合が悪いのかもしれません。
だから、無視して欲しいわけです。
ただ、支援者がその言葉に従ってくれるかどうかは、誰にもわからないでしょうが……。

石井氏のドルフィンウォッチングは再生できるか?

そして、記事は「ウオッチングの成功こそが、イルカ捕獲反対のシンボルである。俺は断言する。」という言葉で終わっていますが、実際にそう思っている人がどれくらいいるのか、多くの人が疑問に感じることでしょう。
確かにドルフィンウォッチングがイルカ漁反対のシンボルになれば、それは理想的なのかもしれませんが、イルカ漁反対派の皆さんは、血まみれの画像ばかりをアップロードするだけで、誰もドルフィンウォッチングの素晴らしさを伝える伝道師になってくれそうにありません。
ハンドウイルカとツチクジラの区別すらつかない人たちが、太地と富戸と壱岐と五島列島とフォロー諸島の区別すらつかない状態で、残酷な画像のアップロード大会をしているわけですから、そこにドルフィンウォッチングが入り込む余地は無いのでしょう。
活動家も自分勝手なことばかり言って、結局は石井氏の所に来てドルフィンウォッチング船に乗る人はごく僅かです。
寄付すら集まらない状況で、批判だけされているわけですから、大変な思いをしていることでしょう。

だが、これだけは忘れてはいけません。
石井氏は、自分の事業のために、「俺はこいつらと同じじゃない」と言っているわけです。
そのことを、地元の方々が実際に聞いて知っているか、どう感じたかは定かではありませんが、少なくとも、僕が地元の人間であるなら、「僕もあなたと同じではないですね」と言いたくなります。
たったそれだけの言葉でしかありませんが、ここまで身勝手な言葉を吐かれたら、同じ地域で生業を営まれている人は、気持ちがいいはずもないでしょう。
考えてみれば、以前はうまく行っていたらしい事業が頓挫してしまったのも、そういった身勝手なところがあったのかもしれません。
石井氏の事業がうまくいかない理由の1つは、地元漁協や事業の関係者との調整がうまく行かなかったではないかと、そんな風に感じます。

個人的な想像ですが、石井氏の事業が再生することは、おそらく無いと思います。
それでも再生させたいと感じる人が一人でもいるのなら、地域から孤立しているであろう石井氏をきちんと支えて、きちんとお金を落とし、無償で石井氏の活動をアピールするような人材が必要になるでしょう。
ところが、そんな勤勉で資金に余裕のある活動家を僕は知りませんし、あまり多くいないであろうことも予想ができます。
まあ、まずいないと思いますが、この記事を読んで、石井氏のサポートをしたいと思った人が仮にいるのであれば、参考にしていただければ幸いです。

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