EIAキャンペーン動画に見る活動家の言説(3) -三段論法による誘導-

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鯨類の資源管理については、IWCなどで議論をされていることは多くの人がご存知だと思いますが、彼らによると、東北のいるか漁業もその議論に含まれるそうです……。

いるか漁業は捕鯨……?

いるか漁業は捕鯨……?

EIAの動画の話も三回目になりますが、今回は、彼らの主張の中で、その欺瞞が一番わかり易い部分について、書いていきたいと思います。
それは、「イルカはクジラ目である」→「クジラ目である以上、イルカは鯨と同じである」→「鯨類は全てIWCによって議論される対象である」という三段論法で、これはザ・コーヴでも、IWCの会場にリック・オバリーが乱入したシーンからも、彼らのロジックの根底にあるのではないかと考えられます
しかし、もちろん彼らの主張は間違っているわけですが、そのあたりについて書いていこうと思います。

イルカの資源管理は水産庁が行なっている

Twitterでも時々「いるか漁業」と「捕鯨」を混同している人を見かけます。
いるか漁業を行なっている地域の一覧になぜか和田や網走の地名があったり、ご丁寧に「捕鯨砲で狩猟」なんて説明まで書いてありますが、管理の管轄が違うものであり、また漁を行う組織も異なるので、混同するのは良くないでしょう。
例えば、IWCで管理している日本捕鯨協会のWebサイトでも公開している通り、大型のハクジラ3種とヒゲクジラ10種で、これらに関して以外は個々の国や地域によって管理されています。
では、日本でイルカの資源状況を管理しているのは誰かというと、それは農林水産著であり、捕獲実績や捕獲枠、そして資源量は「独立行政法人水産総合研究センター」によって公開しています。

以前に、海外の活動家の「鯨類資源は資源量が不確定だから、むやみに捕獲してはいけない」というような主張を眼にしたことがありますが、そう主張する彼ら自身もまた資源量に関して何らかの知見を持っているはずもなく、それなのに「不確定だから捕獲をするな」という強弁をしても根拠も信憑性もありません。

では、実際の資源量についてはどうでしょうか?
先ほどの「45 小型鯨類の漁業と資源調査(総説)」の「図4. 発見した鯨群の種類、頭数を観察台から確認中の観察員(目視調査航海)」という資料をご覧いただくとそれが分かる。
三陸沿岸で捕獲されるイシイルカやリクゼンイルカは変動係数0.2程度なので、誤差はそれほど大きくありませんから、数値には信頼が持てます。
そして資源量は、イシイルカとリクゼンイルカともに、17万頭以上生息しているようです。
捕獲枠は「表1. 漁業形態および根拠地別の小型鯨類捕獲頭数(1998~2007年)」をご覧いただくとわかります。
計算すると、資源量の約3%~4%で収まっていますから、持続的な資源活用ができると推測できます。
しかも、2011年3月11日の東日本大震災によって、2010/11年度の漁期以降、再開の目処がまだ立たない状態ですから、再開した際の資源量は恐らくかなり増加することでしょう。
そうなると、食害による漁業被害なども懸念されますから、資源量をしっかり把握しつつ、放射性物質の検査も念入りに行いつつ、問題なければしっかり活用できる資源になりうると、僕は考えます。

適切ではない拡大解釈

実は、こういった主張は他にもあり、「解体新書「捕鯨論争」」(編著:石井敦)の第一章で、は要約すると「イルカなども鯨類である以上、IWCで管理されるべきだ」という主張をされています。
ところが実際には、別の枠組みで管理されているのが現実であり、その方にそって管理運用されている以上、批判されるというのも奇妙な話です。

また、「まだIWCの枠組みの中に入っていないだけで、枠外だというわけではない」という主張もありますが、枠の中に入っていなければそれは枠の外だと考えるのが一般的ではないでしょうか?

この様に、様々な理屈をつけて、また過剰な拡大解釈をし、現行の法制度に誤りがあり、是正されるべきだと主張する方々はとても多いのですが、その制度を変えるためには彼ら自身がもっと信憑性のある意見を述べ、主張を続けていく必要があるのではないかと思います。

今後の復興のに

以上、三陸沖で捕獲するイルカの資源量には何ら問題が無いであろうことは、お分かりいただけたと思います。
確かに小型鯨類は、水銀などの汚染物質で、取り扱いがナイーブになりがちです(2011年以降は放射性物質の問題も懸念されます)が、2012年5月30日付けの報道で、太地町での水銀汚染疑惑がクリアになりました。
これで、この動画の主張の一つは覆されることになったのですが、消費者の意識はそれほど簡単には変わらないでしょう。
復興が進んでいって、再び大槌港にイルカが水揚げされるのは、かなり遅くなるかもしれません。
しかし、その時には「地域の食文化」として、イルカを活用した料理を、豊富な資源量を活かして定着させれば、新しい地域のセールスポイントになりえるかもしれません。
もちろん、食の安全の面をきちんと鑑みた上での話ですが、最近ではジビエを活用した食品が話題に登ることもありますから、海のジビエとしてイルカを使うというアイデアが、ひょっとすると出るかもしれません。
まだまだ先の話ですが、それまであきらめずに、復興への歩みを続けて欲しいと思います。

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